南十字に戯れる

サザンオールスターズ&桑田佳祐ライブデータ・セットリストを収集・公開しています

桑田佳祐 LIVE TOUR 2021 所感

宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ公演2日目の所感です
 もはや配信の記憶と混ざっているのでは?

早1ヶ月が経過してしまったためうろ覚えです
 寝かしすぎて4ヶ月経ったわけだが

ネタバレしかありません
 今更ネタバレなどない

 


1.それ行けベイビー!!
おもむろにギターを持ち始めたので「おっ、HOLD ON か??」などと冗談をぬかす心の余裕がまだあった。前例こそあるものの1曲目の印象は薄かったので新鮮だった。「適当に手を抜いて行こうな」で始まるライブが良いものにならないはずはない。時勢とリンクする部分もありつつ、替え歌も交えつつの一曲目。禍に見舞われたこの1年半、あるいは「ふざけるな」からの2年、もしくは「がらくた」からの4年、空白を埋めるように、客席とのチューニングを行っているような時間だった。

 

2.君への手紙
これは読めなくない?開幕の3曲はウェルカムドリンクのようなメニューが提供される場として認識していたけど(たまにヤンチャなメニューが運ばれてきて舌が肥える)考えてみればこの曲もまた時勢にフィットするし、季節も合致するし、「こんな男のために小粋なバカが集まった」し、この曲以上に今日この日の我々を迎え入れてくれる曲もないのではないか。

 

3.炎の聖歌隊[Choir]
1曲目にやるであろうという大方の予想を躱して2曲目に来ると踏んでいたけど蓋を開けてみればこのポジション。明らかに今回のツアーを意識した曲なもんで、その威力たるや筆舌に尽くし難いものがあった。こんなに待ちわびた「開演おまちどうさん」があっただろうか…!アクセスの悪さも手伝って「大変ご足労さん」がリアルな響きを帯びて迫って来る。ご足労なのは桑田さんも同じなのでそのまま言葉を返したくなった。発声OKだったら「ようこそここへ」で歓声が上がったのかもしれない。ツアーの旗印のような曲だった。

 

4.男達の挽歌
5.本当は怖い愛とロマンス
会場との意識のチューニングが開幕3曲だとすれば、ここからのブロックは桑田さんがライブ勘を捕まえる時間にあたるのかもしれない。慣れ親しんだいつものライブの温度を感じ取り、緊張感が解かれていった。特に『本当は怖い愛とロマンス』はこれまでのライブの記憶の中でも特に馴染みが深い曲なので、毎回のように披露してくれることが嬉しい。一緒の歩幅で歩いているような感覚がある。

 

6.若い広場
7.金目鯛の煮つけ
とりあえず飛び道具的な曲が襲ってくる心配はなさそうだと安堵しつつ、今回のツアーの色が薄っすらと見えてきたような感覚も覚えつつ。この2曲の食べ合わせの良さはタイトルの並びだけ見ても感じ取れる。『若い広場』のイントロで後ろの人が「ここで!?」と驚いていた。スクリーンをうろつくフリー素材みたいなひよこが微笑ましい。『金目鯛の煮つけ』は江ノ電がフィーチャーされた映像で、曲のイメージが広がった気がする。余談だが翌週に江ノ電に乗りに行った。

 

8.MIYAGI LADY BLUES~宮城レディ・ブルース
「宮城ライブ」以来の宮城レディブルース。再び聴ける日が来るとは思わなかったし生で聴けるとも思わなかった。歌詞は原曲(ややこしい)に沿いつつ一部アップデートが施された2021ver.に仕上がっていた。「みんなで元気になろうぜ!!の会」で神戸・横浜に合わせたバージョンが披露されるのでは?という安直な予想を桑田さんが意図的に裏切った事変が懐かしく思い出される。果たして今回のツアーでは各地の替え歌は実現するのか、大阪ではアニキは登場するのかなどが気になった。

 

9.エロスで殺して(ROCK ON)
イントロで昂ったけど周囲の反応がそこまで芳しくなく、一人だけ浮いていた感。とはいえ「悪戯な年の瀬」で抗体ができているので発作を起こすことなく概ね冷静に楽しめた。席がステージの右側寄りだったので左右に来てくれるダンサーの方がよく見えて良かった。

 

10.さすらいのRIDER
今回は新曲が6曲しかないからいつものアルバムツアーのようにブロックでまとめて演奏される形式にはならず。不意討ちのように登場する新曲の驚きが毎回あった。音源では桑田さん直々に弾いているギターのリフ、今回は誠さんとシゲヲさんという強力なツインギターがいるのでそちらにお任せ。裏声の艶が艶々で聴いているこちらも艶々になった(?)音源では得られない生々しさがあった。ガンボーのところなんか特に。

 

11.月光の聖者達
世界観に入り込んでいたので細部は覚えていないが、ストリングスがいない分バンドアレンジが際立って聴こえたような気がする。何度か生で聴いているけど今までで一番掴まれた。「今がどんなにやるせなくても明日は今日より素晴らしい」ともすれば陳腐になりそうなこのフレーズにどのようなバックグラウンドを見出すかで刺さり方がぜんぜん違う。メンタルのリトマス試験紙にもなる心療内科のような曲(?)


12.どん底のブルース
文字通りライブの最も深い底のコーナーに突入。ライブでの演奏頻度で言えば今回のツアーで最も珍しい☆5のSSR。「暗い曲をやります」との前振りから『孤独の太陽』迎撃体制を取るもあえなく被弾。着席+ギター持ちというスタイルもまた珍しく、客席も座って(居住まいを正して)拝聴する姿勢。桑田さんが座るのなら自分も座る。途中から2021年の世相を反映した歌詞に変化していき、最終的に希望のある歌詞に至るところは『私の世紀末カルテ』ライブバージョンに近い印象を受けた。スクリーンの切実な映像も相まって、今この場が現実から切り離された夢の世界ではなく日常の地続きにあることが淡々と示される。どん底の閉塞とともに、どん底から見上げる空の青さを我々は知っている。

 

13.東京
『東京』は毎回きらびやかな衣装を着せてもらって果報者だなぁなんてことを思ったのはがらくたツアーの時だったか。今回もまた鷹揚なイントロのお膳立てで晴れ舞台に臨まんとする。この1曲でサザンではない桑田佳祐のライブになるので本当に強い曲だなぁと毎度思う。滋味が深いギターソロが終わり最後のサビに入る時の桑田さんの一瞬の動きが照明と相まってとてつもない格好良さだった。「雨よこのまま」がカットされていたので歌うのがきついのか…?と思っていたけどどうやら「呼び捨て」ツアーでも同様のアレンジだったとの情報をいただいたので少し安堵した。

 

14.鬼灯
悲劇がベースにありつつも決して悲しみだけにフォーカスしているわけではなく、教訓を紡ぐわけでもなく、淡々と起こったことを伝える様子にかえって怖さを覚える。2番の印象的な進軍ラッパには健やかな未来への眼差しも感じられた。スクリーンには舞い上がる紙のプレイン。曲の頭と尻にあるブルースのようなギターがとても好き。

 

15.遠い街角(The wanderin' street)
「呼び捨て」ツアーのこの曲を何度観たことか。ユニクロCMからの選抜なのか微妙なところ。生で聴くことのできた喜びが大きかった。『君への手紙』と同じく季節感が寄り添ってくれる。ホーンがなんか珍しい音を出していた?

 

16.SMILE~晴れ渡る空のように~
五輪とは別の文脈で時宜を得た歌詞が灯火のように掲げられる。スクリーンにはニュース映像のような悲喜劇の数々。この曲が背負うものの大きさ、この曲の向こうに見えるものの多さ。今の桑田さんが引き受けようとしている役目や覚悟の一端を感じ取れた気がして、本当に素晴らしいパフォーマンスだった。元気玉の完成を見守るモブキャラはこんな気持ちだったのかなぁなどと変なことを考えた。

 

17.Soulコブラツイスト~魂の悶絶
SMILEの緊張からコブラツイストの緩和へ。『どん底のブルース』あたりから長く長く取っていた助走が終わり、一気に駆け抜けていく開放感。内側で渦巻いていたエネルギーが外に放たれていく気持ちの良さ。宇宙まで飛んでっちゃう。禍がなければ憚ることなくコブラツイストの絡みがお披露目されていたのだと思うと惜しい。今目の前にいる65歳のおじさんがどれほどの高みに立っているのかを思い知らされた。SWITCHのキャッチコピー「世間一のポップスター」が脳裏をよぎった。まさにこのフレーズに尽きる。桑田佳祐、お前がナンバーワンだ。

 

18.Yin Yang
19.大河の一滴
あまり覚えていない。魂が悶絶していたので、あるいはダンサーの妖艶な佇まいに目を奪われていたので。Yin Yangから大河へ間を置かずになだれ込んだものだから客席が(無言で)どよめいていた。世界観がぜんぜん違う2曲なのでサポートメンバーともども切り替えが大変そうだなぁと思った。2曲とも本編終盤のアッパーなコーナーに馴染んでおり、サザンに比べるとソロは新陳代謝が大変良い。

 

20.スキップ・ビート(SKIPPED BEAT)
KUWATA BANDから独立してもうすっかりソロワークスの一員。「I LOVE YOU」あたりまではまだ名義によるシマの意識があったように思うけど、こうして当たり前のようにソロ名義の中に混じってレパートリーと化していることが喜ばしい。手拍子のコールアンドレスポンスは楽しいけどやはり物足りない。I love your guitar, Play some more to me!のシャウトはお預けとなり、ツインギターお二人へのバトンパスのフレーズに変わっていた。というかここをまんま意訳したような振り方になっていたし、突飛な替え歌ではない点がみそ。

 

21.悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)
アレンジにも歌い方にも新しさはないし、それでいい。ソロライブをソロライブたらしめるアトラクションなので。ブルーノートといい、ライブにおけるこの曲の役割の変化を感じる。煽りすぎない煽りができる唯一無二の曲かもしれない。楽しい気持ちになった。

 

En1.明日へのマーチ
今ここにないものに思いを馳せる時間、それ以上でも以下でもない。いつしか手拍子はしない派になった。

 

En2.オアシスと果樹園
アンコールでもこの曲は強い。純度100%の朗らかさで楽しめる曲なので、ライブ序盤から全体的に漂うじっとりとした重たさから解き放たれる時間だった。心が求めていたのかもしれない。アンコールの曲たちは明らかに禍と切り離された世界に響いていて、コントラストがはっきりと見えたような気がした。

 

En3.愛の奇跡(ヒデとロザンナ
カバーをやります、55歳以上ならわかります云々の前フリがえらい長かった。その流れから始まった曲が本当に知らない曲だったから心に住まうおいでやす小田が「誰の!何や!」と叫んだ。ブリッジ的にワンフレーズだけ歌って次に行くいつものやつだと思っていたらがっつり歌われたから驚いた。コーラスの暴走劇もまた往年のライブを想起させて楽しい。桑田さんは今日一番楽しそうな表情をしていたし、仕事の合間に趣味を披露してくれたような微笑ましいパートだった。

 

En4.波乗りジョニー
アンコールでは珍しい。原点回帰?で水着ダンサーが女性のみ。この曲もある意味愛の奇跡を歌った曲だ。水着ダンサー7桑田さん3ぐらいの割合で視線をうろつかせていた。曲の途中でも桑田さんのイヤモニを調整しに来るスタッフの図が懐かしい。無心で楽しんだ時間だった。

 

En5.祭りのあと
明日晴れるかなで締めると予想していたけど、本編でこれだけ明日晴れるかな的概念を散りばめてきたものだから、やっていたらちょっと胃に重かったかもしれない。そこへいくとこの曲はまさに正着。今回はフル尺で聴くことができた。今日の出来事を楽しい記憶として保存するための最高の曲。夏から秋へと移ろう時期も手伝って強く心に刻みつけられた。


概観

「歌っていて気持ち良い曲を歌いたい」という最近の桑田さんのモードを如実に表した選曲だったように思うし、新曲6曲を中心に据える上でどう周囲を肉付けしていくかの試行錯誤も伺える気がする。ちょっと浮いて見える『エロスで殺して』がバランサーとして機能している感じ。

おなじみの曲でもプレイヤーが変わると音もアレンジも変わるし、曲の表情が変わってくる。あたり前のことだけど今回新メンバーの鶴谷さんがもたらした功績は大きいと思う。何よりご本人が表情豊かに叩いていたし、これまでにない新しい風を感じることができた。ありがとうにょろーん鶴谷さん。


その他メモ書きより抜粋。
(帰りの電車でひたすら打ち込んでいた)

・開演前アナウンスを途中で噛んでいて生でやってるのが判明した
・ウェーブは無かった(いらん
・紙テープステージ前で止まる演出
・メンバー紹介はソロ回し
・いつもより両端に桑田さんがきてくれてた印象
・久しぶりにスタンドアリーナを連発していた
・歓声が上がりそうな曲できっちり歓声のSEを流す
・あまり表に出ないかわちょーがメンバー紹介されたのが良かった。みためかわらんな